【現地レポート㉒/男子決勝】高校生たちの “ 強さ ” を感じた男子ファイナル
2024年12月29日
高校バスケにおける強さとはいったい何でしょうか。そんなことを考えさせられるゲームでした。
SoftBank ウインターカップ2024の男子決勝戦は福岡大学附属大濠 (福岡①) が 77-55 で勝利し、3 大会ぶり 4 回目の優勝を遂げました。
今年の福岡大学附属大濠は、日本代表に選出された #8 渡邉伶音選手を筆頭に、#13 湧川裕斗選手や #14 高田将吾選手、#10 榎木璃旺選手といった、タレント豊富なチームです。彼ら 4 人は昨年度からスタメンを務めていて、ウインターカップ2023の決勝戦も経験しています。タレント、キャリアともに高いチームだけに「2024年の福岡大学附属大濠は強い」。シーズンが始まる前からそう言われていました。
強いと言われているチームが勝つと不思議ではないようにも思いますが、一方で「強い」と言われることがプレッシャーになることもあります。ケガや、世代別の日本代表選出などで、チーム作りが順調に進まないこともあります。そう考えるとタレントを抱え、強いと言われているチームが強くなることは、決して簡単なことではないのです。
「彼ら自身が昨年の悔しさを知っているというところが、どんなきついことがあろうが、『いや、これじゃ勝てない』と前に進む原動力になっていました。選手たちのなかに同じ悔しさ……同じ悔しい景色も持っていたことが、彼らを向上させることにつながったのではないかと思います」
福岡大学附属大濠を率いる片峯聡太コーチはチームの強さをそう話します。
悔しさだけでありません。地元・福岡でおこなわれた高校総体では準決勝で敗れますが、地元の方々から応援していただける感謝の気持ちを改めて得ることができました。その後、秋におこなわれた「U18日清食品トップリーグ」では、優勝したことで「俺たちはできるんだ」という自信も得られました。悔しさと感謝と自信。それらが下馬評の高かったチームをより強くしたと指揮官は考えていました。
それとは異なる視点を持っていたのが、福岡大学附属大濠の #8 渡邉選手です。
「自分とチームと信じきれたことが一番だと思います。たしかに自分たちは周囲から『強い』と言われていましたが、ただシーズンが始まる前は何も成し遂げていないことも事実だったので、チャレンジャーの気持ちでやっていました。能力の高いメンバーもたくさんいましたが、全員が全員、自分自身のことと、チームメート全員のことをリスペクトして、仲間を信じられた、チームを信じられた、そしてコーチを信じられた……その『信じられた』ことが今日の優勝につながったと思います」
信は力なり――タレントやキャリア、身体能力だけではなく考え方や精神面など、人間の持つ内面が同じように成長して初めて、強いチームは真に強いチームになるのです。
それは勝ったチームに限りません。鳥取城北は、結果として決勝戦で敗れましたが、彼らもまた強いチームでした。チームを率いる河上貴博コーチは言います。
「どんな状況でも楽しめることは彼らの強さかなと思います。今日の試合が終わって、泣いている子もいましたが、最後は笑顔で終わろうとずっと言っていたので、それをしっかりやってくれた、その徹底力も今年の鳥取城北の強さだったと思います」
SoftBank ウインターカップ2024は、男子が福岡大学附属大濠の、女子は京都精華学園の優勝で幕を下ろしました。よく言われることに「強いチームが勝つのではない。勝ったチームが強いのだ」があります。その言葉に従えば、彼らは間違いなく強いチームでした。
ただ、負けてもなお「強い」と思えるチームが、高校バスケにはいくつも存在します。それこそが高校バスケのおもしろさでもあるのでしょう。