【現地レポート⑪】敗れるときは美しく――新田 #12 福島健太
2024年12月25日
シュートが思うように決まらなければ、得点は伸びていきません。自然と勝利も遠のいていきます。それでも自分たちらしさを見失わないチームは、たとえ敗者となっても、どこか輝いて見えるものです。
SoftBank ウインターカップ2024の男子 2 回戦、新田 (愛媛) は藤枝明誠 (静岡) に 62-122 で敗れました。スコアだけを見れば完敗です。しかし取材エリアに現れた新田のキャプテン、#12 福島健太選手は晴々とした表情で「楽しかったです」と、最初の一言を発しました。
多くのチームがディフェンスをベースに、そこからのトランジションバスケットをチーム作りの根幹に置くなか、新田は「オフェンス重視」のバスケットスタイルを掲げています。しかもピック&ロールが全盛の現代において、その軸足はパッシングゲームにあります。文字どおり、ボールと人がひとところに止まらないバスケットです。
福島選手はその楽しさをこう言います。
「みんなでつなぐバスケットということで、個の力ではなく、チーム全体で戦っている感じがします。チームでバスケットをしている、という感覚をプレーしている僕自身も持てているところが、新田のバスケットのいいところだと思います」
パス、パス、パス、シュート……と思わせて、もうひとつパス。シュート。
ファストブレイク、レイアップシュート……と思わせて、真後ろから走り込んできた選手へ、股の下からパス。シュート。
もちろん、もっとシンプルなパッシングプレーもあれば、ドライブだって、しないわけではありません。
ボールの動きだけを追っていると、なぜ、そこへのパスがつながるのか、わからないこともあります。それについても #12 福島選手が教えてくれました。
「毎日毎日練習して、毎日毎日対人をして、それを繰り返していくなかで、見えていなくても、声が聞こえたら『仲間がここにいる!』という感覚が研ぎ澄まされて、パスの感覚も磨かれていくんです」
日々の練習のなかで磨きに磨かれた、新田の選手にしかわからない感覚が、チームの結束力にも昇華され、選手たち自身も新田のバスケットを、心から楽しめるようになるのです。
相手を攪乱して生み出したシュートチャンスが、藤枝明誠戦について言えば、思うように得点につながりませんでした。自分たちで作ったシュートチャンスを決めきれなければ、しかもそれが何度も続くようだと、今日のような結果になることもあります。
それでもなお、彼らは最後まで新田のバスケットを貫きました。
新田の選手たちに、この試合の勝ち負けは関係なかった、とは言いません。彼らも勝つつもりで試合を始めています。ただ最後は、その勝ち負けを超えて、彼らは自分たちのバスケットを貫きました。
敗れるときは美しく――これも高校バスケットの醍醐味といえます。