【現地レポート⑨】開き直った“復活”のエース――京都精華学園 #13 新開温矢
2024年12月24日
「彼が戻ってきてくれてうれしいですし、応援団も含めて『おかえり!』という空気がありました。彼がコートにいると、選手たちの中でもそうですし、指揮を執る僕の中でも安心感があります」
京都精華学園 (京都③) の山崎翔一朗コーチがこう語る “ 彼 ” とは、#13 新開温矢選手。同級生の #23 東郷然選手とともにダブルキャプテンとしてチームを引っ張る、3 年生スコアラーです。
「SoftBank ウインターカップ2024」の男子 1 回戦、柳ヶ浦 (大分) との初戦を迎えた京都精華学園。コートに現れた新開選手は、黒いフェイスシールド、左腕にサポーターという姿でした。
実は11月のウインターカップ府予選で、腕と顔を負傷。時期が時期なだけあって、ウインターカップ本戦への出場は絶望かと思われました。しかし「自分が東山戦でケガして病院に行って、その次の試合でみんながウインターカップ出場を決めてくれたのですが、そのときもいっぱいメッセージをもらいました。そこで『自分もやっぱりウインターカップまでに戻らなあかんな』と強く思いました」と新開選手。そして「ゴッドハンドでしたね」という名医に出会えたこともあって、11月中旬の手術から短期間で驚異的な回復。完全復活とはいわないまでも、約 1 週間前から練習に復帰し、何とか開幕に間に合ったのです。
ベンチ出場となった新開選手は、「出だしが悪いことも予想していたので、自分が出たらディフェンスをハードにやったり点を取ったりして、みんなを盛り上げることを意識していました」と冷静でした。良くも悪くも予想どおり、立ち上がりは柳ヶ浦ペース。そこで第 1 クォーター終盤からコートインした新開選手は速い展開を繰り出し、第 2 クォーターには自ら果敢に攻めて連続得点を挙げます。試合の流れが変わり、#6 上野叶翔選手の得点でチームは逆転に成功。
ただ、その後は主導権の奪い合いとなりました。京都精華学園は10点リードで前半を折り返したものの、後半は内外角から得点を重ねた柳ヶ浦の勢いにのまれ、第 3クォーターを終えて 48-55 と 7 点のビハインド。それでも、この苦しい場面で立て続けに速攻を繰り出し、東郷選手、新開選手の得点で第 4 クォーター残り 3 分、ついに 64-64 の同点に追い付きます。最後は大黒柱 #77 ソロモン レイモンド選手の活躍もあって、結局 73–68 で大接戦を制しました。
27分の出場時間を得て、10得点、3 アシスト、2 スティールと大きな存在感を見せた新開選手。冒頭で山崎コーチが述べたように、彼がコートに立つとチームが引き締まり、周りの選手たちにも安心感が生まれるようです。新開選手自身は、「(復帰が) ギリギリ過ぎて逆に焦りもないというか、『もうしゃあないやろ』って感じで開き直ってますね」と、あっけらかんと語ります。
奇跡の復活を遂げたエースに、もはや失うものはありません。高校最後の舞台に、持てる力をすべてぶつけるでしょう。