SoftBank ウインターカップ2024 第77回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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【現地レポート⑤】重責の “ 10番 ” が鍛えた心 ── 仙台大学附属明成 #10 瀧豊多

2024年12月23日

 延長に持ち込むには、僅かにあと “ 1 秒 ” 足りませんでした。ラストショットは試合終了のブザー後となり、最終スコアは 63-65 。激しいディフェンスで最後まで粘った仙台大学附属明成(宮城)でしたが、日本航空(山梨①)の前に惜しくも 2 点差で敗れました。

「SoftBank ウインターカップ2024」の男子 1 回戦、注目のカードとなったのが仙台大学附属明成と日本航空の対戦です。ウインターカップ優勝 5 回を誇る “ 冬の明成 ” と、大黒柱の #23 オルワペルミ ジェラマイア選手を擁する日本航空。このうち、昨冬、今夏と 2 大会連続で 1 回戦敗退に終わっている仙台大学附属明成にとっては、何としてももぎ取りたい 1 勝でした。

 恩師である故・佐藤久夫コーチから引き継ぎ、昨年途中からチームの指揮を執っている畠山俊樹コーチは、自身が高校 3 年生だった2009年にウインターカップを制しています。現役選手たちも当時の映像をチェックしており、#10 瀧豊多選手は「俊樹さんたちが優勝したときのように、ディフェンス、リバウンド、ルーズボールという“誰もができること”を徹底して勝ち切ろうと、みんなで目標を立ててやってきました」と言います。

 第 1 クォーターこそ日本航空に流れを奪われ、10-18 と追う展開になりましたが、第 2 クォーターで見せ場を作ります。しつこいディフェンスで相手を嫌がらせ、オフェンスでは瀧選手が僅か 5 分の間に 5 本の 3 ポイントシュートを決める爆発。33–32 と、仙台大学附属明成が 1 点リードで試合を折り返しました。

 後半、内外角から得点を伸ばした日本航空が再び立て直しますが、仙台大学附属明成も激しいディフェンスで大きくは点差を離されずに食らい付きます。第 4 クォーター残り 5 分、日本航空の絶対的司令塔である #30 大道一歩選手が足を攣って一時交代になったところを見逃さず、仙台大学附属明成は #4 小田嶌秋斗選手がバスケットカウント、3 ポイントシュートを決めて大歓声を浴びながら雄叫びを上げました。残り 4 分、61-61 の同点に追い付きます。

 それでも、日本航空は勝ち方を熟知していました。エースのジェラマイア選手が冷静にドライブやリバウンドシュートで得点し、終盤も #99 三村デール アンソニー選手らがオフェンスリバウンドを掌握。対する仙台大学附属明成は、#8 近怜大成選手がゴール下シュートなどで存在感を見せたものの、冒頭で述べたように僅かにあと 2 点及ばず、試合終了となりました。

 試合後、観客席に挨拶する仙台大学附属明成の選手たちの多くが、顔を真っ赤にして悔し涙を流していました。ただ、悲願の勝利は果たせなかったものの、最後の 1 秒まで分からない勝負を演じ、見る者の心を動かす試合を全力で披露したことは間違いありません。

 中でも、3 ポイントシュート 6 本を含むチームハイの20得点を挙げたのが、3 年生の瀧選手です。彼はチームの得点源として、歴代のシューターたちがつけてきた背番号 “10” を昨年から背負ってきた選手。「最初は、この10番のユニフォームに袖を通すだけで肩が一気に重くなってしまうほどのプレッシャーを感じていました」と明かします。

 それでも、「去年からこの10番を背負わせてもらって、OBの方々やコーチ陣、チームメートから『どれだけ入らなくても打ち続けろ』というのを、この 2 年間ずっと言われてきました」と、周りからの助言もあって “ 打ち続けるメンタリティー ” を培うことができました。今回、自身最後のウインターカップでは「(10番のユニフォームに)慣れてきたわけではありませんが、“ 絶対やってやる ”という気持ちで試合に入れました。そこは去年からの成長だと思います」と吹っ切れた様子で渾身のプレーを披露。それはこの 2 年間、さまざまなことを乗り越えながら精神的にも大きく成長を遂げた証しでしょう。

 ただ、彼ら 3 年生たちの歩みはここで終わりではありません。畠山コーチはエールの気持ちを込めて、次のように語ります。

「選手たちにここで満足してほしくないので、この試合が『ベストゲーム』だとは言いません。やっぱりいろいろな部分で、選手も僕自身も “ 甘さ ” が見えましたから。3 年生はここでの 3 年間よりも、次が大事です。3 年生は、久夫先生から 1 年間教えてもらった最後の代というプライドもあったでしょうが、ずっと勝てなくて、悔しい 3 年間だったと思います。でもこの悔しさを、いかに次に生かしていくかが勝負です」

 多くの悔しさや重責を味わいながら、心身ともに鍛えられた仙台大学附属明成での 3 年間。かけがえのない日々を糧に、3 年生たちには次のステージでのさらなる飛躍を期待したいと思います。

 

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