SoftBank ウインターカップ2024 第77回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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苦悩からの解放――
FG10分の1から復活してみせた崎濱秀斗[ウインターカップ2023]

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9月の骨折からギリギリで間に合った崎濱秀斗

福岡第一がノーシードから優勝を果たしたウインターカップ2023。その舞台裏で、エース#17崎濱秀斗は苦難を乗り越えて頂点に立った。

9月下旬、#17崎濱はU18日清食品トップリーグの福岡大附大濠戦で、左足のジョーンズ骨折(第5中足骨の疲労骨折)という大ケガに見舞われた。手術を受け、全治3か月という診断。ウインターカップ出場もギリギリと言われたが、本人は諦めることはなかった。

当時、「間に合うかどうか不安がありましたが、チームメイトの頑張りも後押ししてくれたし、何より『去年のウインターカップの“忘れ物”を絶対取りに行きたい』という気持ちで、絶対に復帰しようと思いました」と語っていた。

“忘れ物”とは、もちろん優勝のことである。2022年大会でも決勝進出を果たしたが、開志国際(新潟)に71-88で惜敗。自身はわずか5得点に終わり、「自分の仕事であるシュートを決めきれず、(先輩たちに)申し訳ない気持ちです」と大粒の涙を流した。

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復帰戦の相手は、強豪・仙台大明成(宮城)。試合開始から45秒、#17崎濱はドリブルで左ウイングに出るとプルアップシュートを投じている。これは決まらなかったものの、1Q残り5分を切ったところでドライブからフローターを放って大会初得点。前半はこの2点のみとなったが、後半は11得点。2Pシュートは4/5と高確率だったうえ、11アシストとチームメイトの得点も演出した。

2回戦の北陸学院(石川)戦で15得点(3P2/6、2P3/11、FT3/4)をマークすると3回戦の東海大付諏訪(長野)戦では35得点の爆発。2Pシュートは9/13、3Pシュート5/9と素晴らしい数字を叩き出した。

「昨日今日と自分の中でもアジャストできています。明日からメインコートになりますが、今日完全にアジャストできたので、また明日頑張れればと思います」と語った#17崎濱。“アジャストできた”の言葉どおり、後半の3Pシュートは5本放ってミスはわずか1本だけ。ほとんどがプルアップジャンパーであり、3Pラインから2mほど離れた場所からも難なく決めている。

井手口コーチの一言で背中を押されたエース

“完全にアジャストできた”#17崎濱だったが、好事魔多し。東山戦ではよもやの不調に襲われてしまった。1Q、東山に9-0というスタートダッシュを切られた中、自身はフィールドゴール1/5で4得点。2Qのシュート1本、3Qの4本のシュートもすべてミスに。そんな中、3Q残り3分半には18点差(36-54)までリードを作られてしまった。

3Qを終えて4得点。FGは1/10(2P1/5、3P0/5)という状態だった。「今までこんなに入らないゲームはありませんでした。『これで終わるんだろうな』と思っていました」と試合後に語った#17崎濱。得点源となるべき自分が絶不調でリードを許している。

部員数115人(当時)という福岡第一である。かかるプレッシャーがどれほどかは、本人しか感じ得ないものだろう。そんな中、「お前が全部やれ」と背中を押したのが、井手口孝コーチだった。奮起しようとする#17崎濱だが、4Q開始7分までで2本の2Pシュートを決めたものの、残り3分で10点差を付けられる窮地に立った。

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それでもチームメイトの頑張りもあって、その後1分間で6点差まで迫る。

そして残り1分57秒、#17崎濱は#51サー・シェッハのピックを使い、右ウイングからシュート。これが決まり、4点差に迫った。さらにその30秒後、再びボールを保持すると、#1世戸陸翔のピックを使ってトップに出て3Pライン際からシュート。これが決まって69-70と1点差に迫った。このあと東山が#5瀬川琉久のフリースローを1点決めて2点差に。こうして舞台は整った。

残り38秒からのインバウンズ。#17崎濱がボールを持つと、マッチアップしてきた東山#8小泉広翔(早稲田大)をピックに引っ掛けてトップから3Pシュート。これが見事決まり、72-71とこの試合で初めてリードを奪った。この直後の攻撃を凌いだ福岡第一が74-71で勝利を果たした。

「決めてやろうという気持ちがあったのと、誰よりもシューティングをしている自信があったので、自分を信じて打ちました」と#17崎濱。最後に成功した3本のシュートは、チームメイトのピックを使ってのものだった。

この年、インターハイ準決勝を含めて1度も勝利できなかった東山を下した福岡第一は、勢いのままに準決勝で藤枝明誠(静岡)を、決勝で福岡大附大濠(福岡)を下して頂点に上り詰めた。

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東山#8小泉広翔をピックに引っ掛けてトップから3Pシュート

ウインターカップ2023、#17崎濱は総得点で1位に2点差の118点、アシストで1位となる37本を記録した。興味深いのがシュートの割合で、2Pシュート試投数が平均9.3本(成功数5.0本/成功率53.6%)で、3Pシュート試投数は9.0本(成功数2.7本/成功率29.6%)とほぼ均等の数字となっている。

ドライブか、3Pラインの内側でのジャンパーか、それとも3Pシュートか。数字の偏りがないのだから、ディフェンスにとっては厄介な相手だったはずだ。また、大会全体で見ると、#17崎濱はチーム総得点の24%を奪い、3Pシュート成功数では半数近くになる16本(チーム合計35本)をマーク。

またアシスト数は約4割となる37本(チーム合計97本)を記録しており、エースとしてシュートを沈めていく一方、チームメイトたちの得点を演出していたことがわかる。

これまでスタッツには興味がなかったという方も少なくないだろう。しかし、NBAの世界ではデータサイエンティストと呼ばれる専門職もあるなど、スタッツの世界は実に奥深いものである。より細かく分析するまでもなく、この選手がどれだけの数字をマークしているのか、チームとしての数字はどうなのか?

スタッツに注目することで、バスケの楽しみ方はより広がるはず。「SoftBank ウインターカップ2024」、あなたが応援する選手、気になっている選手やチームのスタッツに注目して観戦してみてはいかがだろうか。

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“データが自分を、チームを強くする”
《MY試合記録》

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